東急不動産株式会社
東急不動産が取り組む2つの新規事業──事業の成長から逆算したADDIXの事業創造支援とは
2025.03.18
2020年より東急不動産とグループ会社の伴走パートナーとして支援をしてきた株式会社ADDIX。今回は、サービス構想策定からサービスグロースまで多岐にわたるプロジェクト支援の中から、テナント向けの「健康経営サービス」推進と、会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート」事業推進の2つの事例を紹介。前者を担う東急不動産株式会社の若松賢太郎氏と、後者を担うライフ&ワークデザイン株式会社の置鮎佳典氏、そしてそれぞれのプロジェクトで伴走しているADDIXの羽賀亮太氏、髙橋勇紀氏に話を聞きました。
オフィスビルに「健康経営サービス」という新たな価値を加える
最初に東急不動産さんとADDIXさんの取り組みの全体像について教えてください。
その一つが、東急不動産の都市事業ユニットにおける、テナント向けの「健康経営サービス」推進のプロジェクトです。このユニットでは、都心の都市開発を担うセクションとして、オフィスビル・商業施設の開発から賃貸、運営を行っています。その中で私はビル運営事業部に所属し、ビルの資産価値の維持向上を最大ミッションとして活動しています。
このミッションのもと、渋谷の大規模な開発が話題となっていますが、東急不動産が所有している50~60棟の物件のうち、築年数が経ってきた中規模ビルの競争力をつけることが課題となっていました。
入居していただく企業に選ばれ続けるにはどうすればいいのか、どのようなニーズがあるのか、オフィスビルの入居者様へのヒアリングや市場調査を行ってきました。その結果、昨今話題となっている「健康経営」に興味があるものの実践できていない企業が多いことがわかりました。そこで「東急不動産のオフィスビルに入居したら、社員のウェルビーイングの実現にも貢献できるような健康経営サービスが享受できる」ことはプラスアルファの価値になるのではないかと感じ、推進を決定しました。
このプロジェクトでADDIXさんが伴走支援に至るまでの経緯を教えてください。
健康経営サービスに着目して深掘りし始めたのですが、私たちの本業は不動産領域のため、ソフト面の事業化ノウハウが少なく、ゼロからのサービス構築には高いハードルがありました。しかし、健康経営やヘルスケアソリューションを専門領域とする事業者の方々と相談を重ねた結果、1社では成し遂げられないが、各社が持っているリソースを有機的に組み合わせることによって、「ワーカーのウェルビーイングの実現にも貢献できる健康経営サービスが出来るのではないか?」と、2022年5月にパートナー企業11社とコンソーシアムを組成しました。このコンソーシアムでは、オフィスへの来訪を通じて、ワーカーの生活や行動の動線上で健康に意識を向ける仕掛けを作り、生産性向上に繋がることを目指しています。
ADDIXさんには、2022年1月からプロジェクトのご支援をいただいています。当時、コンソーシアムを組成し、DXの観点からソリューションを考えるにあたり、グループ内ではリソースが足りませんでした。その中で、ちょうどプロジェクトメンバーの中に竹芝のスマートシティプロジェクトに参加していたメンバーがおり、「その当時の実績と信頼もあり、事業開発領域を伴走してくれるパートナー」という評判を聞いて、お願いすることにしました。

東急不動産株式会社 都市事業ユニット 都市事業本部 ビル運営事業部 営業運営第一グループ グループリーダー 若松賢太郎氏
深い事業理解と事業を確実に前進させるポテンシャル
プロジェクト全体の中でADDIXさんはどのような位置付けなのでしょうか。
プロジェクト全体の推進支援を行っています。東急不動産様のプロジェクトメンバーにとってこのプロジェクトは、既存業務と並行して取り組まれているものでした。また、コンソーシアム共創ということで、関係先も多岐にわたるため、スケジュール調整も煩雑になります。そこで、全体の段取りや方針の設計、スケジュール検討、コンソーシアムにおける関係各所との連絡に至るまで、ADDIXが受け持たせていただいています。
また、ADDIXはサービス設計やシステム開発など様々な機能を持ち合わせているため、全体の進行のご支援だけでなく、プロジェクトの各フェーズに合わせたご支援まで、一気通貫で関わらせていただいています。基本的に、私がプロジェクトマネージャーとしての役割を担い、フェーズごとにビジネスデザイナーやシステムディレクターといった専門のメンバーも配置し、常時2~3名の体制でご支援しています。現在は、サービスローンチに向けてのシステム実開発のフェーズに入ってきたため、エンジニアも複数参加しています。
システムやサービスの設計・実行はもちろんなのですが、ADDIXさんならではのパフォーマンスを最も発揮していただいているのが、コンソーシアムの要である「各社のリソースを有機的につなげる」ことです。目指すべき世界観はお伝えし、システムなど技術的なことについてはより専門知識のあるADDIXさんに間に入ってコミュニケーションを取っていただけているのが大変助かっていますね。
私たちは、極力東急不動産様のプロジェクトメンバーの手がかからないようにすることを心がけています。コンソーシアムのパートナー企業との打ち合わせも、東急不動産様の方針に沿って私たちが実行し、定例の打ち合わせでご判断だけをいただくようなスタイルをとっています。これも竹芝や他のプロジェクトでの実績や動きを信頼していただいているおかげだと思います。
このプロジェクトにおける今後の取り組みや展望を教えてください。また、その中でADDIXさんにはどのような役割を期待していらっしゃるでしょうか。
まずプロジェクト全体としては、2023年度にテナント企業への健康経営サービスの提供を目指しており、現在はサービス構想策定からPoCを経たシステム要件定義へと進んでいます。ADDIXとしては、引き続きフェーズに分けて課題を整理した上で、各課題に応じた最適なご支援をしていきます。
サービスローンチの時期は決まっていますが、当然ローンチ後も進化し続けなければ使われなくなってしまいます。ですから、サービスの継続的なブラッシュアップや、事業としてどうPDCAを回していくか、その点で引き続きご支援いただきたいと考えています。
東急不動産ホールディングスにはDX推進をメインにするDX機能会社が設立されましたが、そちらでもADDIXさんのご支援をいただいています。ホールディングス全体からみたこのプロジェクトの立ち位置や考え方や、他のサービスとの有機的なつなぎ方についてもアドバイスいただきたいですね。
私は「東急不動産の社員」という気持ちで動いています。同社の様々なプロジェクトに関わってきたことで、東急不動産様全体の事業理解があり、ご相談いただく際に前提のご説明をいただかなくても内容をすぐ飲み込めるようになりました。また、社員の方々への面識もあるため、ADDIXから直接その方に確認することができるような、まさに“社員のような動き”ができるのが強みです。これからも事業の内部に共に入り込むことで、お手間をかけずに、かつ良いものを作っていくパートナーでありたいと思います。

株式会社ADDIX ソリューション事業部 ビジネスプロデュースユニット マネージャー 羽賀亮太氏
新規事業立ち上げから10年の「ビジネスエアポート」が抱える課題
もう一つのご支援事例である会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート」事業について教えてください。
ビジネスエアポートは、東急不動産が手がける会員制シェアオフィス事業です。施設運営を担っているのがライフ&ワークデザインで、私はマーケティング担当として、同事業のブランド認知やPRの施策を企画しています。この事業は2013年に、東急不動産の新規事業として立ち上がりました。主に小規模事業者や起業家・スタートアップがメイン利用者となっており、多様なプラン・オフィスから、利用者の事業フェーズやニーズ、ワークスタイルに合わせてプランの選択が可能です。利用者様のビジネスの成功・飛躍をサポートすることをコンセプトとしており、さまざまなサービス・付加価値を提供しています。現在は首都圏を中心とした好立地に複数拠点あり、各施設で利用者を募っている状況です。

ビジネスエアポート イメージ画像

ビジネスエアポート イメージ画像
事業スタートの背景は、当時「働き方改革」のもと、ワーカーが場所や時間にとらわれずに働ける気運が高まっていたことがあります。「働き方改革」により多様な働き方が可能となる中で、働く場所に求める価値が、生産性向上やクリエイティビティ等へと変わってきました。そこで、従来型のオフィスに代わり多様な働き方に対応可能で、ワーカーにとって快適で生産性向上やクリエイティビティが得られ、ビジネスが成長・成功するワークスペース・シェアオフィスを作ろうという思いからスタートしました。
ADDIXさんからのご支援を受けるようになった経緯についてお聞かせください。
事業開始して以降安定して成長してきましたが、風向きが変わったのが2020年から続くコロナ禍でした。「リアルな場を前提とした利用者同士のコミュニケーションやイベント、サービス・付加価値提供によりビジネスの成功をサポートする」というビジネスモデルが、世の中の状況とそぐわなくなってしまったのです。これからの事業成長や施策の道筋が見えなくなってしまったため、外部からのアドバイスを採り入れつつ、課題と打ち手、成長の方向性を決めていきたいと考えていました。
そこで色々な企業とコミュニケーションを重ねていたのですが、「競争過多になっているシェアオフィス業界でビジネスエアポートの存在価値をどのように打ち出していくか」という課題に対して、最も理解と提案を示してくれたのがADDIXさんでした。2021年からパートナーとしてご支援いただいています。

ライフ&ワークデザイン株式会社 マーケティング本部 兼 運営事業本部 運営第四部 本部長 置鮎佳典氏
主にADDIXが推し進めたのはマーケティング領域ですが、その前段階として事業や顧客データの整理から入り、段階を分けて注力領域の優先順位を決定することも担いました。また、創業約15年になるADDIXは元々デジタルマーケティングに強みのある企業なので、課題を整理して優先順位を決めた後は、改善策の提案と実行推進までをご支援しています。
事業成長から逆算した本質的な支援
具体的な取り組みと、その中でのADDIXさんによるご支援について教えてください。
まずは会員数を増やすため、来店や見学の問い合わせに至る流入量の増大化に取り組みました。半分は東急不動産様の“中の人”として、これまでの広告施策の整理をしつつ、同時にWeb広告の運用や認知ブランディング、動画やコンテンツなどの制作、それらのクリエイティブをタクシー広告やデジタルサイネージ等、ターゲットとなる消費者にあらゆる方法で届けることまで担当しています。
マーケティングからクリエイティブまで一気通貫での実行推進力は、ADDIXさんを選んだ大きな理由ですね。また、シェアオフィス事業はBtoCの要素も強いビジネスで、顧客データの分析やデータ活用の必要性も感じてはいたのですが、データ活用がうまくできてないという課題がありました。ADDIXさんには、その可視化もご支援いただきました。
スポットごとの点の話だけでなく、その先の事業成長まで見据えたコミュニケーションが取れるので、ADDIXさんが東急不動産の“中の人”という感覚は確かにあります。会員の継続利用やアップセルなどのカスタマージャーニーを一緒に描けるのも、マーケティングや広告施策の前に事業全体を理解した上で取り組んでくださっているからだと思います。
伴走いただく中で、おそらく私たち以上に事業を理解している面があるでしょうし、特にデータの分析を元に事業の課題や特有の価値を理解してくださっているのだと感じます。ADDIXさんとはいわゆる“受発注”の関係ではなく、目線を合わせていただけるのも非常に助かっていて、専門的な話の場合は私たちにわかりやすい言葉で説明していただいています。
今後ビジネスエアポートは、数多くの競合の中から選ばれるブランドになっていきたい、シェアオフィスのリーディングカンパニーになりたいという展望があります。引き続きADDIXさんには、私たちの足りないところをフォローしてもらえたらありがたいです。
これまで1年半伴走させていただきましたが、これからが本番だと思っています。置鮎様とディスカッションを重ねていますが、問い合わせや会員の“量”に加えて“質”も高める施策を展開していきたいですね。
最後に、東急不動産さんからみたADDIXさんの企業としての魅力について教えてください。
東急不動産の“黒子”としても動けるし、中の人として表にも出ていける。まさに企業のかゆいところに手が届く存在ではないでしょうか。先回りして動けるほどに事業や組織の理解をしてくれてると感じています。仕事を親切丁寧にやってくれるし、スピードも速いし、何より一緒にやりやすいです。
ありがとうございます。2017年頃から世の中でDXの支援が求められるようになってきましたが、ADDIXには、それより前となる2008年の創業以来、受発注の関係性を超えて、さまざまな企業のDX支援パートナーとして伴走してきた歴史があります。
DXは新規事業であることが多いですが、そんなにすぐにうまくいくことはありません。しかも、立ち上がり期は人員が少なく、通常業務もある中で、大変な労力がかかっていることがあります。そこにADDIXのメンバーが加わることで、一緒に汗をかきながら、成果を出すことをサポートできればと考えます。これからも様々なプロジェクトに伴走させていただきたいと思います。

株式会社ADDIX ソリューション事業部 ビジネスプロデュースユニット シニアマネージャー 髙橋勇紀氏
※本記事はBiz/Zineで公開された記事(https://bizzine.jp/article/detail/9254)の転載となります。