知的障害特別支援学校高等部生徒向けに刊行された、将来の自立した生活に必要な知識や教養を楽しみながら学べる教科用図書「くらしに役立つ」シリーズ。平成31年の学習指導要領改訂を踏まえてリニューアルされた国語・社会・数学・理科・保健体育・家庭の6冊のクリエイティブ開発からデザイン制作を担当しました。
各教科ごとのキャラクター設定や生徒同士、また教師との対話によって、生徒の学習への不安や疑問を解消しつつ、問題解決的な学習過程を意図し、より主体的な学習となるように、学習段階をアイコン化して(「調べてみよう」「考えてみよう」「確認しよう」「まとめよう」など)示し、思考の導線をより分かりやすいものにしています。
また各教科の表紙には、アーティスト 宮本憲史朗さんの作品を起用し、鮮やか且つ広がりを感じる作品が生徒の学習の始まりを豊かなものにしています。生徒たちと重なるバックグラウンドをもつアーティストのデザインにより、特別支援学校に通う多くの生徒が自分のものとして共感し、誇りをもちつつ、知識と教養を楽しみながら学べる教科用図書を目指しました。
教科用図書『「くらしに役立つ」シリーズ』
「くらしに役立つ」シリーズは、生徒が現在のくらしを豊かに過ごし、また将来自立して生活していくために必要な知識と教養を、楽しみながら学ぶことができるシリーズです。知的障害特別支援学校高等部において、学校教育法附則第9条により市販本等を教科書として使用している現状を踏まえ、生徒の実態に即した教科用図書として刊行しています。
クライアント課題
- オールカラー化により視認性を上げるとともに、現代的な諸課題や生徒の生活実態に即した内容となるようビジュアル面も含めてリニューアルを図りたい。
ADDIXご支援内容
- エディトリアルデザイン
- クリエイティブ制作
成果
- 2024年度「グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)」を受賞
■制作体制
プロデューサー:東洋館出版社 西田亜希子、大岩有理奈/株式会社ADDIX 池辺隆之、十河日佳里
ディレクター:株式会社ADDIX 池辺隆之、麻生愛
デザイナー:株式会社ADDIX 森迫華子、菊間美帆、坂口和巳、大野如子、井出菜々恵/外部協力:松本悠、稲石浩佳、佐々木綾
■グッドデザイン賞審査委員による評価コメント
この「くらしに役立つ」シリーズは教科書の存在そのものをリデザインし、どのようにしたら学びと暮らしが地続きになっていくのか、今の日本の社会でどう生きていく方法があるのか、どう接点を増やしていくのかを教えてくれる教科書として、また、先生をサポートする教科書として挑戦していることに評価が集まった。グラフィックとしてのわかりやすさの評価もあるが、この企画や監修者など、関わってつくり上げたチームが高校生たちの将来環境を変えたいという気持ちがプロダクトを通じて感じられる。もはや教科書というよりもホールアースカタログのようなホールライフカタログのような存在と考えられるだろう。まさにこの教科書をつくった勇気と社会の中でどう有機的に生きていくかの道をつくってくれる、当たり前にデザインされてきたものに対して、どう、誰にデザインするのかを考え直し未来を見せてくれるプロダクトだろう。
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